イオアニナを出発したバスは、予定通り、夜の8時半頃には、イグニメッツァに到着した。

イグニメッツァに来たのは、深夜1時発の、イタリア行きの夜行フェリーに乗るためである。なので、夜8時半着でも、早く着きすぎたくらいだ。

それにしても、イグニメッツァ港に関する情報は非常に少なく、バスもどこで降りればよいのか、よくわからなかった。港っぽいところで一度バスが停まった。何人かの乗客は降りていくが、ほとんどの乗客はバスに乗ったままである。

イグニメッツァ港は、国内専用の港と、国際港が分かれていると何かで読んだ気がする。見た感じ、停まった場所は国内用の港に見えたので、このまま乗っておけばよいかなーとぼんやりと考えていると、姉がちゃきちゃきと運転手さんに聞きに行ってくれた。

帰ってきた姉いわく、「港はここしか停まらないから、ここで降りるみたいだよ」。そこで、バスを降りたが、何となく、ここはイタリア行きの船が出る場所ではない感じがする。

私は風邪で頭がぼーっとしていたが、姉が運転手さんに「私たちはイタリア行きの船に乗りたいのです」と聞いてくれて、すると、一緒にバスを降りたギリシャ人の女の子が「国際港に行きたいの?じゃあ、私が連れて行くわよ!」と申し出てくれた。

このギリシャ人の女の子は、非常に英語が堪能で、ここイグニメッツァに住んでいるそうだ。そ、それにしても、歩くのが速すぎて、スーツケースを引っ張っているのと、風邪で体調が万全でないので、私はギリシャ人の女の子と姉のペースについて行けず、駅伝でずるずると引き離されるランナーのごとく、どんどん置いて行かれる始末。

姉が私を振り返って、「いいからゆっくり歩いておいで」と言ってくれる。それにしても、なぜヨーロッパの人たちは、こんなに歩くのが速いのであろうか。

余談だが、私はこのヨーロッパ人たちの歩き方と、自分の回りにいる、スタイルがよい女友達の歩き方が似ていることに、ある日気付いた。それは、真上から糸で引っ張られているかのように背筋を伸ばして、膝を上げて、大股で悠然と歩く歩き方である。

私はこれを「歩き方ダイエット」と名付け、私の短い足で、この歩き方を日常的に徹底してみることにした。すると!1年間で2㎏の減量に成功したのである!たったの2㎏だけど、ちょい痩せしたい女子には、歩くだけで体重が落ちるのだから、画期的なダイエットではないか!本でも出版したら売れるかな~?夢の印税生活…(いつまでも夢ばかり見ている私の人生…)。

イグメニッツァ港

歩いて行くうちに、イグニメッツァ国際港ターミナルが見えてきた。バスが停まった国内港からは、歩いて10分くらいであった。

ここまで一緒に歩いてくれた女の子は、てっきりこちらの方向に用事があるのかと思いきや、私たちを送り届けると、来た道の方向へと戻ろうとした。

びっくりした我々は、「わざわざ違う方向なのに送ってくれたの?本当にありがとう!」とお礼を言うと、「困っている人を助けるのは私のポリシーなの」と笑顔で答えて、手を振って颯爽と夜のイグメニッツァに消えていった。あまりにもクールすぎる。心はホットなのに、仕草はクール!

旅行中にこんなに親切にしてもらうと、本当に身にしみ入る。ギリシャを旅していると思うことは、ギリシャ人は大人しくて控えめけど、驚くほど、旅人に親切な人が多いということだ。バックミュージックに中島みゆきの「一期一会」を流したくなる場面に、よく遭遇するのだ。

さて。まずは、港の中に入って、夜行フェリーのチェックインを済ませよう。このオフシーズン、予約なしでもフェリーには乗れるだろうが、きちんとキャビン(客室)を確保してぐっすり眠りたかったので、現地で四苦八苦して手続きするより、日本で、ゆっくりと落ち着いてオンライン予約したほうがよいだろうと考え、オンラインで予約を入れてある。

今回乗るフェリーは、パトラを出発し、イグニメッツァを経由して、南イタリアのブリンディシに行く「グリマルディ・ラインズ(Grimaldi lines)」という会社のフェリーである。

この「Grimaldi lines」の船を予約するのには、日本でも苦労した。まず、公式サイトが開かないのである(今に思えば、この時点で、「Grimaldi lines」のことは、見限っておくべきだったのである。後述するが、二度と乗りたくない船であった…)。

そこで、世界中のフェリー予約ができるという「A ferries」というサイトから予約することにした。このサイトで予約すると、クレジット決済に数百円の手数料が取られるのだが、公式サイトで予約ができない以上、仕方あるまい。予約を入れて、届いた確認メールをプリントアウトして、この港の窓口でチケットと引き換えるシステムである。

イグニメッツァ港の窓口

「Grimaldi lines」の窓口は見つからなかったのだが、よくよく見ると、この「MINOAN LINES」の窓口に、「Grimaldi lines」のロゴも貼ってあったので、とりあえずここに並んでみる。手続きの場所はここで良かったが、パスポートの提示を求められて、服の下に入れていたため、姉と交代でトイレに取りに行った。よく考えれば、パスポートが要るのは当たり前だね。

さて、イグニメッツァ港。以前、この港を使ったという方のブログを読むと、ここの軽食スペースはまあまあ美味しかったと書いてあったが、カフェのようなお店が少しあるだけで、微妙なサンドイッチが置いてあるだけであった。カフェのテレビではバスケットボールの試合が流れていて、たくさんのオヤジたちがテレビを見ていて、煙草も吸っていたので、あまり空気がよくない。

イグメニッツァ港は、チケット販売のスペースの先に、荷物をチェックする保安検査場があった。港のスタッフに聞くと、保安検査場の先には食べ物を売っているお店はないらしいので、保安検査場をくぐる前に、港の外で食事を取ってくることにした。

イグニメッツァ港のコインロッカー

イグニメッツァ港にはスーツケースが入るサイズのコインロッカーがあったため、ここにスーツケースは置いていくことにした。8時間で€2、24時間で€3。ドキドキして使ってみたが、普通に日本のものと同じように使えた。

イグニメッツァのお食事処はほとんど調べてないのだが、港を出たところにタヴェルナ(ギリシャ風レストラン)があり、TripAdvisor (トリップアドバイザー)の評判も悪くなかったので、ここに入った。

Taverna Timos

この「Taverna Timos」というお店。

中に入ると、ここでもバスケットボールの試合を流していて、店のシェフだと思われるおじさんが、熱心に試合を見ていた。お客さんは誰もいなくて、バスケットボール観戦を邪魔してごめんという感じだったが、仕事はきっちりするらしく、私たちが入店すると、すぐに案内してくれた。

Taverna Timos

今回のギリシャで好きになったお料理が、スタッフド・ベジタブル。野菜の中に、肉やライスなどを詰め込んだギリシャ料理だ。

ココのお店はそれなりに美味しかったのだが、何せ、風邪気味の私の胃袋の元気がなかった。しかも、姉もあまり食欲がないという。これはおそらく、ギリシャ滞在中に外食が多かったせいだ。ギリシャ料理は美味しいとはいえ、姉と私は、やっぱり外食が続くと疲れてしまうようだ。何にも味がついていない野菜が食べたいよう(要するにタジン鍋。日本での私はタジン鍋食らい女)。

Taverna timos

しかし、食後に頼んだココアは、非常に非常に美味しかった。チョコレートが濃厚に効いていて、日本で飲むココアというよりは、ホットチョコレートという感じ。このタヴェルナの隣にオシャレなカフェがあり、そこから運んできた感じだった。経営が同じなのかもしれない。イグニメッツァ港近くで時間をつぶしたい場合は、そちらのカフェを利用してもよいかも。

ギリギリまでレストランで時間を過ごし、またイグニメッツァ港に戻った。保安検査場をくぐって、後は待合室で船を待つのみである。この時点で夜11時くらいだった。あと2時間はあるため、端の椅子でゆったりとくつろいで待つことにした。

イグニメッツァ港

こちらが保安検査後の待合室。免税店は並んでいるが、確かにお茶などを飲めるカフェなどはない。

さて。このまま深夜1時にフェリーが来てくれたら、何の問題もなかった。

しかしである。このイグニメッツァ港と来たら、船が到着しても、何のアナウンスもなければ、電光掲示板でのお知らせもないのである!!!

イグニメッツァ港

見てくださいよ!これが電光掲示板なのだが、何にも、何にも表示されてない!表示される気配もない!

待合室から、埠頭へ出る出口には保安官が座っているだけで、この保安官の仕事は保安でしかないため、この人が船の到着を教えてくれるわけでもない。要するに、何度か埠頭の方に目をやり、船が来てるかどうか自分たちでチェックしなければならないのである!何と言う自己責任社会!

イヤ、こういうの嫌いじゃないんだけどね!問題は!船が2時間も遅れたのだ!つまり、深夜1時から、深夜3時くらいまで、何度も何度も埠頭に船が来ていないか目を配り、いつ着くかもわからない船を待ち続けたのである。あーーーーしんどかった。何人か同じ船に乗る仲間はいたが、かなり少人数だった。

イタリア行きの船

やっと船が来た。しかし、これが我々の乗る「Grimaldi lines」かどうかの確証はないぞ!この前に近づいてきた船は、我々の期待をあざ笑うかのように、国内港の方へと行ってしまったのだ。

接岸した船の側面を見ると、「Grimaldi lines」であった。しかし、拍手と歓声で迎える気にはなれなかった。深夜3時で、姉も私も眠さが疲労へと変わっていた。

しかも、である。接岸した「Grimaldi lines」のフェリーからは、ものすごい勢いで大型トラックが次々に飛び出してきた!大量の排気ガスをまき散らしながら!

誰か教えて!どうして、先に乗客を乗せてくれないの?乗客が乗ってしまったらトラックが出れないとでもいうのか(んなわけあるか!)?なぜ私たちは、いつ終わるともわからないトラックの群れを、排気ガスを吸わないように口と鼻を押さえながら見守り続けているのだ!?

もーね、こんな機会ないだろうと思ったので、時間を計っておいたよ。なんと、30分!30分も、トラックが排出され続けるのを、排気ガスの真ん中で、乗客のみんなはぼんやりと眺めていたのである。ああ、こんなんで、私の風邪がよくなるわけがあるまいよ!

そして、ようやく「Grimaldi lines」へと乗り込むことができたのだが、これで我々の困難が終わったかと思うと大間違いだったのである。これはタダの、「始まりの終わり」だったのである。

(2017年ギリシャ旅行記はこれにて終了。イタリア旅行記に続きます)